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キャッチャー川本の倫理学

「期せずして最終巻となった」(誰のせいか知りませんけれど)、岩波応用倫理学シリーズの最終配本は、「経済」がテーマですね。 岩波 応用倫理学講義〈4〉経済作者: 川本隆史出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2005/07/22メディア: 単行本この商品を含むブ…

仲正昌樹『日本とドイツ 二つの戦後思想 (光文社新書)』

戦後60年を記念して、ドイツと日本の戦後思想を比較しつつまとめ直す。著者もいうように、なんと安直な企画かと思いきや、この本は、単に「戦争責任」の取り方についての日本とドイツの態度の違いを示すにとどまらない。戦後、国際社会上、日本とドイツが…

『思想』6月号

林智信「イスラームの倫理と反資本主義の精神」 イスラム社会には、なぜ近代資本主義が成立しなかったのか、その答えを、イスラム社会における法人格概念の欠如にみようとする論文。論旨はきわめて明快、というか単線的で、問題の複雑さに比べて、論述があま…

統合学術国際研究所

名前がすごい。漢語の文法にも適っているのか疑問ですが、今週の「読書人」でレビューされてたので、気になりました。「複雑系・プリコジン・現象学」と、ある意味「ど真ん中」なので。調べてみたら、2001年に日蓮宗のお寺さんが作った研究所とのこと。…

「なんちゃってリベラリズム」批判(1)

昨日のエントリの続きでもありますが、やっぱり昨今のリベラリズムは、開き直りもほどがあるでしょ、ということで、まずは典型的なものから。 責任と正義―リベラリズムの居場所作者: 北田暁大出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2003/10メディア: 単行本 クリ…

芸術の宗教化

先日のゴッホのエントリで、取り上げそこなってしまいましたが、ゴッホで最近話題の本といえば、ブルデューんとこの弟子筋にあたる「芸術社会学」者、ナタリー・エニックの本ですね。 ゴッホはなぜゴッホになったか―芸術の社会学的考察作者: ナタリー・エニ…

マグダラのマリア

娼婦として、悪霊にとりつかれた「罪」をイエスに清めてもらったマリアが、身をなげうって主に仕える。宗教画のある種典型ともいえる画題なはずなのに、新訳の正典をいくら読んでもその具体的な記述に当たらない。そんな、門外漢ながら不思議に思っていた謎…

ゴッホ展をみる

演習・実習で、近美のゴッホ展を学生と見てくる。昨日はチケット買うのに40分、入るまでに120分とキチガイ沙汰だったみたいですが、今日は折良く降ってきた雨のおかげか、15分くらい待っただけで入れました。精神年齢が異様に若い彼らが、どれほどの…

データとオピニオン

お返事が遅れてしまいました。モボさんのいわれるようなところはなんとなくわからないでもないのですけれど、まあ、とりあえず哲学プロパーの話題としては先のエントリのようなことをいっておかなければならないと思いました。実際、皆様が期待しているのは…

『倫理学年報』第54集

昨年の倫理学会では、台風が直撃したこともあって、本会の受付をちゃんとしなかったため、今更ながら年報が送られてくる。またまた非常に遅い反応ではあるものの、とりあえずのチェック。 川谷茂樹(九州大)「『ホワイ・ビー・モラル?』とカント」 一時期…

『哲学』第56号

5月の日哲の大会の出欠はがきをそろそろ出さなければならないと、書類の山になっている机を探っていたら論集が出てきた。そういや、送られてきたまま忙しくて封筒に入りっぱなしだった。つうわけで、知人のYくんも載ったことだし(祝!)、今日は実はいな…

言語の運用能力

学生の基礎的な能力をつける、という名目のゼミで、大野晋の『日本語練習帳』を使ってみたのですが、案外好評。言葉が悪い悪いといわれる若い人たちでも、ボキャが少ないながら、言語感覚というのは割ときちんと機能しているものかなと思わされた今週でした…

近代の癒しがたい病

今度の発表準備のため、ブログの方もあんまり進んでませんが、たのんでいた本が届いたので、ざっとメモ。 A・セン『合理的な愚か者―経済学=倫理学的探究』 最近の経済学の動向っていうと、やっぱりこの人もはずせませんか、ということで、はじめてこの本に…

経済学関連

だいぶご無沙汰してしまいました。・水田洋『アダム・スミス研究』だいぶ前に書かれたものだけれども、復刊してるみたい。かなりよい。たしか、岩波文庫の『道徳感情論』や、ホッブズの『リヴァイアサン』をやくしてたひとじゃなかったかしら(未確認)。ち…

「企業=家」という市場の外部

企業・市場・法作者: ロナルド・H.コース,Ronald Harry Coase,宮沢健一,藤垣芳文,後藤晃出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 1992/10/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 32回この商品を含むブログ (23件) を見る 差異のエチカ (叢書 倫理学のフロン…

ガタリの『アンチ・オイディプス』担当部分草稿

[本][ニュース] ガタリ『アンチ・オイディプス』草稿 from 哲劇メモ なんと!ちょうど、昨日読み返していて、あーやっぱここからガタリだよなー、なんて無責任に思っていたところ。買わなければ。

 お勉強。

経済学、乱読。 経済学の歴史 根井雅弘 しっかりと地に足がついた感じで経済学の諸説とその連関を提示してくれる良書。勉強になりますた。 経済学説と政治的要素 増補改訂版 ミュルダール 経済学において中心となる価値論に、思想的なイデオロギーがいかに反…

お勉強

なんと「美学」をやらなくてはならないことになったので、まず簡単に近場の本でお勉強。 美学 (文庫クセジュ 259)作者: ドニ・ユイスマン,久保伊平治出版社/メーカー: 白水社発売日: 1959/02メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る うーん。プラ…

安野モヨコ『働きマン』

電車広告でちょっと気になっていた、安野モヨコの『働きマン』の単行本が出ていたので、 青山ブックで立ち読み。なるほどねぇ、と感心した。 働きマン(1) (モーニング KC)作者: 安野モヨコ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/11/22メディア: コミック購入:…

家の中の他者

レヴィナスは、主体として立ち上がることを「家にあること(chez soi)」と捉えた。普通の解釈であればこの「家」を、「個人」が主体として立ち上がる事態と捉えるのが適当と考えられるが、しかし、これを「法人」と捉える余地があるのではないか、と最近考…

大漁まちこ船

大漁!まちこ船 (ワイドKC)作者: 三宅乱丈出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/11/22メディア: コミック購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (34件) を見る 漫画批評の方から教えてもらう。たしかに、こりゃすごいという感じ。エロティシズムとは…

私的所有は侵さざるべき人間の権利か?

「みんな自分のことでがつがつするのはやめて、他人と協力しながら生きていこうよ」。今の社会で、そんなことをいうやつがいたとすれば、それはよほど育ちがいいか、単におめでたいバカであるのか、どちらかだ。生まれ落ちたときから、「平等」の名の下に、…

差異のエチカ 合評会

差異のエチカ (叢書 倫理学のフロンティア)作者: 熊野純彦,吉沢夏子出版社/メーカー: ナカニシヤ出版発売日: 2004/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (10件) を見る 18日の哲学/倫理学セミナーの合評会に参加。論文執筆者が…

「受苦者のまなざし」の重要性?

受苦者のまなざし―初期マルクス再興作者: 山之内靖出版社/メーカー: 青土社発売日: 2004/11/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (9件) を見る 学部学生の頃よんで非常に感銘を受けた『マックス・ウェーバー入門』の山之内せんせのマルク…