金沢21世紀美術館

いやぁ、成功していました、21世紀美術館。現代美術をあんだけ楽しく見せられれば十分でしょう。

  • ゲルダ・シュナイダー&ユルグ・レンツリンガー

ワタリウムでやってた『落ちる庭』の系列のものだろうけれども、やっぱりすごいいい。吊り下がっているものが以前より穏当なのは、一般向けということか?落下と浮遊、空間的なバランスと時間の宙づりが共在するユートピア。うちにも(もしも高い天井があったら。実際には到底無理だろうけど)ほしい作品No.1。寝室にどうぞ。

トイレという神聖な時間と空間に対するオマージュ。参加者が実際にその信仰にあずかれるように、会場内の本当のトイレの中で、用を足しながら見るというのも実にいい。ただ、実際には来場者の中でスルーする人も多いだろうし、気がついた人たちの間に共犯感覚が生まれるのはいいが、しかし、そのことがかえって実際の鑑賞の「ひとりの時間」を過ごすことの障害となるのはどうか。

これもすごい、いい。コンセプチュアルはコンセプチュアルだけど、現代芸術にありがちな頭でっかちのものではなく、直に身体性に訴えかけるもの。まあ、かなりの部分がすでに建築ですね。プール仕立ての作品をプールサイドとプールの底の両方から見られるようになっており、10cm程度に張られた水を挟んでお互いの鑑賞者を鑑賞するというもの。特に上からみると、下にいるひとが魚が動いているように見える。手をつないで出口に急ぐカップルとか、愛嬌でハシゴからあがってくる仕草をまねるおじさんまで、まるで餌をもらいに来た鯉のようなのだな、これが。かなり楽しい。

  • アニッシュ・カプーア

「深淵」を現実に作ってしまったという作品。これももう見たまんま、いらん注釈など何も必要ないという感じ。現代思想が精魂込めてジャーゴンにしていたものが、こんなに簡単にポンと出されるとはね。やっぱ哲学屋は危機感感じた方がいいよ。

  • ジェームス・タレル

カプーアと似たところがあるかもしれないけれども、宗教色などいらないという点では、もっと好感がもてるかも。この人の作品というと、村田さんの『色彩の哲学 (双書 現代の哲学)』をどうしても想い出してしまうけれど、この人自身も心理学ばたけから出ている人なのですね。なんとなく納得してしまいました。