著作権の思想的背景

Copy & Copyright Diaryさんより。著作権の思想的背景について、簡潔にまとめてある論文の紹介、参考になりました。法学素人で、哲学的に考えるものにとって、法学者がこうしたアプローチで正直に語ってくれるのは大変うれしいですね。そして、いくつかの文献。

「所有権」の誕生

「所有権」の誕生

「所有権」が、結局のところ、「インセンティブ」的な権利であることについて

そして同書は、下記のように結論づける。

このように考えると、それぞれの社会において、生産量の極大化をはかるという社会的要請が権利概念発生の基礎にあることがわかるだろう(90頁)。

 「生産量の極大化をはかるという社会的要請」。まさに、インセンティブ的発想そのものである。[火塚たつやさんのサイトより]

しかし、所有権は、神話化され、自然権として把握される。

では、インセンティブ論者が、所有権をインセンティブ的に把握しているかと言えばそんなことはなく、所有権を自然権的に把握している。憲法で所有権が財産権の典型として把握されている以上、「所有権は自然権ではなく、インセンティブである」という結論を採用することは出来ないからだ。

でも、物事を根本から疑うことが仕事の哲学屋としては、

だとすれば逆説的な言い方になるが、所有限がインセンティブによって生み出されつつも現在は自然権として把握されている以上、著作権もまた、インセンティブではなく、自然権によって把握すべきなのだ。 []

こうした「出来上がっているものは崩すまい」という解釈の仕方は、必ずしも必要のないものに思えてしまいますね。実際に国家を支えていかなければならない法律家ゆえでしょうけれども。

他、

半田正夫『著作権法の研究』一粒社

など。